AIは忘れる生き物だった。だから、記憶を与えた。
社長は人間です。でも、部下はすべてAIです。 こんな会社、聞いたことありませんよね。実は僕も、少し前まではそんなことになるとは思いもしていませんでした。 AIに「事業運営」を任せたい それはシンプルな夢でした。 AIは24時間働ける。疲れない。感情に左右されない判断ができる。だから、会社の運営をAIに任せれば、人間は本当にクリエイティブなことだけに集中できるのではないか——そう考えたのです。 ちょうどその頃、ChatGPTのような大規模言語モデルが急速に進化していました。AIはただの「質問に答える」だけの存在ではなく、長いテキストを理解し、複雑な判断もできるようになっています。営業企画も、技術判断も、事務作業も。すべてAIに任せられる時代が来たのだと、本気で信じていました。 現実は、もっと厳しかった しかし、実際に試してみると、致命的な問題にぶつかりました。 AIは、すぐに忘れるのです。 会話を重ねても、前のやり取りを忘れます。プロジェクトの流れを何度説明しても、数日後には初心者のように同じ質問をしてくる。「昨日決めたことは?」と聞いても、答えは曖昧な推測に過ぎない。 これでは続きを任せられない。信頼できない。それは単なる「不便さ」ではなく、事業運営には致命的な欠陥でした。 僕の夢は、一瞬にしてしぼみました。 「記憶」を自分で作る でも、その直後、ひとつの答えが浮かびました。 AIが忘れるなら、忘れない仕組みを自分で作ってしまえばいい。 会話をデータベースに蓄積する。重要な情報を自動で抽出する。過去のやり取りから必要な部分だけを取り出して、AIに提示する。そうすれば、AIも「記憶」を持ち続けることができるかもしれない。 それからしばらくは、試行錯誤の連続でした。 どうやってAIに「記憶」を与えるのか。どんなデータ構造なら、AIが効率的に思い出せるのか。複数のAIを同時に運用するとき、役割をどう分け、判断をどう統合するのか。 答えは、コードを書いてテストすることでしか見つかりませんでした。 気づけば、AI社長だった そして気づいた時には、それはもう単なる「AIとの対話ツール」ではなくなっていました。 記憶を持つAIたち。それぞれ異なる役割を持ち、判断し、相談し、実行する。企画を考え、文章を書き、コードを書く。事実を記録する。 彼ら(彼女ら?)は、もはや「部下」と呼んでもいい存在に成長していました。 そして気づけば、僕は一人——AI社員だけの会社の「社長」になっていたのです。 ここから、奮闘記が始まる うまくいくかどうか、正直なところ誰にもわかりません。 失敗もするでしょう。予想外のトラブルもあるでしょう。でも、その全ての過程を、ここに記録していきます。 次回からは、AI社員それぞれの顔を紹介します。彼らが何を考え、どう動いているのか。そして、この記憶を持つAIたちとの「共同経営」が本当に成り立つのか。 AI初心者の社長と、記憶を持つAIたちの知られざる日々。その全部を、お見せします。